エッセイ

ARTの根っこにあるもの。聖書がわかれば世界が見えるかも

聖書の内容がわかっていたら、もっと絵画や演劇、映画、小説を楽しめるのに…あなたは、そう思ったことはないだろうか? 私はいつもそう思う。

欧米の文化のベースは、古代ギリシャ・ローマ文化と古代イスラエル文化だといわれる。ギリシャ・ローマ神話と聖書。この2つの神話が、欧米の文化の根っこある。聖書は欧米の大きな根っこの一つなのだ。だから欧米の文化であるARTの根っこには聖書がある。

欧米の芸術を見ると、聖書を題材にした美術や音楽は多いし、小説も聖書からの引用が多い。ヨーロッパはどこの街にも教会があって、キリスト教文化が根付いている。

欧米の文化は、世界中に広まったから、日本のアニメやマンガでも聖書をモチーフにしたり、引用したりしたものが多い。『エヴァンゲリオン』とか『進撃の巨人』、『聖 おにいさん』etc

聖書を題材にした作品を見ても、ただ見ているだけだと、ああ綺麗だな、上手に描けているな、面白いな、凄いなで終わってしまうけれど、描かれている意味や内容がわかると、もっと作品が理解できるし、楽しみが広がると私は思う。私は聖書がよくわからないので、なんだか残念だ。

聖書がわかれば、欧米の文化がよくわかり、世界の文化がわかる。旧約聖書はキリスト教、ユダヤ教、イスラム教が共有しているからだ。

中国がいくら力をつけてきたとはいえ、世界を牽引しているのは、やっぱり聖書の世界の人々だ。経済も文化も。だから、聖書を知ることは世界を知ることなんだ。

たとえ現代では、多くの人々が信仰を離れ、キリスト教徒やユダヤ教徒でなくなったとしても、世界の大多数の人々のものの考え方の根っこには、聖書を生み出した古代イスラエルの文化があると思う。

今の時代を生きていくには、今の時代を理解して表現するには、聖書って外せないのではないか? なぜなら聖書は世界の文化の根っこなんだから。というわけで、私は聖書について、勉強してみたいと思った。

勉強といっても、そんな大それたものではない。聖書を題材にした美術作品をみて、内容が理解できたり、本を読んだり映画を見たときに、聖書のどこからの引用なのかがわかるようになりたい。世界の大多数の人々の考え方のベースになっている、一神教のものの考え方が、少しは理解できるようになりたい。そう思っているのだ。

ただし、私はクリスチャンではないし、キリスト教の信者になりたいとは思っていない。私が勉強したいのは、あくまで文化としての聖書であって、宗教としての聖書を学びたいわけじゃない。

私が知りたいのは、どういう内容で、歴史的にどんな意味があったのかとか、聖書をベースにしたものの捉え方とはどんな考えなのかとか、聖書についての客観的な話なのだ。

聖書については、教会の牧師さんや、神父さん、信者さんたちが、多くの動画や記事をUPしている。参考にしているし、勉強になるけれど、残念ながら、少し気が引けてしまう。彼らは文化としての聖書を語っているのではないく、神様の話として、聖書を語っているからだ。

教会関係の人の話だと、どうしても脅されているような気持ちになってきて、私は困ってしまうのだ。(もちろん、語っている方達は皆んなを救いたい気持ちで話しているのだとは思うのだが…)

いろいろ探してみたけれど、なかなか文化としての聖書が学べる動画や記事、本が見当たらない。やはり、宗教となると、いろいろ難しい問題が入ってくるのだろう。

とくに一神教は、いろいろな考えの人がいろいろな考えのもとに、同じ名前の神様を信じているので、なんの後ろ盾もない、信者ではない一般人が、下手なことをいうと、ややこしいことになるので、聖書に知識がある人も腰が引けて、文化としての聖書を語るのをためらってしまうのだろうか?

私は聖書を1年かかって、自分なりに一通り読んでみたが、読んだだけでは何のことだかよくわからなかったというのが感想だ。ただ、日本人の私からすると「血生臭くて勘弁してほしい」というのが、正直な気持ちだ。

最近こんな本を読んでみた。『仁義なき聖書美術』著者:架神幸助・池上英洋 旧約編 発行所、株式会社筑摩書房』

聖書をモチーフにした名画と、名画が題材にしている聖書の話を、著者が独特のヤクザ調の語りでわかりやすく解説しているのが面白かった。

私がこの本に拍手したいのは、ヤハウェ(一神教の神)を『ヤクザの親分』として描いているところ。すごくわかりやすくて、ヤハウェの個性をよく現していると思う。

神様というと、良いひと(神様だけど…)と思いがちだが、聖書の神様は全然良いひとじゃない。ヤクザの親分と捉えると私にはすっと入ってきて、聖書を理解するのに役にたった。ただ、もうちょっと聖書を深く学びたいと思うので、物足りなかったというのはある。

聖書がわかると、欧米がわかり、世界がわかり、ARTがわかる。なので、勉強できる教材を探しつつ、これからちょくちょく、聖書とARTについて記事を書いていきたいと思う。